ボコーダーのところで書いた「低品質の電線」だが、ああいう研究がされていたということは、今からでは信じられないほど昔の電線の品質が低かったということが推測できる。例のNTTパンフにはサンプリング(デジタイズ)の原理や電話のコストパフォーマンスなど、有用な情報が多数記載されていてカネゴンは愛読していたが、その中で、「電話会社は、電線の品質を必要以上によくしないように頑張っている」という記述があった。理由はまさにコストとのバランスで、「音声しか通す必要のない電線に映像を通すのは無駄だから」とあった。それはまさに正しい。しかし、インターネットが登場したことで、信じられないほどコントロールされた品質の電線が裏目になって、64kbit以上の情報を伝えようとすることの足枷になってしまった。64kbitといっても、NTTが保証しないだけで、別に通しても問題はない。実際に、ADSLはそうやっている。そのかわり、無限遠に信号を伝えることができず、我慢できる減衰で到達できる距離が有限(下手をすると数百メートル)になる。電話交換機や分配機などあちこちにフィルターが仕込まれていることもあるだろうが、電線がまさにそのように製造されていることのあかしでもある。10Base-Tのツイストペアシールドを扱うたびに、そんなことを思い出す。