■
稲葉振一郎の経済解説は、本人が門外漢であるところから始まっているせいかとてもわかりやすい。しかしここで述べられていることを読めば読むほど、どこか不吉な匂いが漂ってくる。人々の物欲をどのようにして煽るかなどという、そんな決定的な方法を頭のいい人たちがひねり出せるはずもない以上、自動車とパソコンに次ぐ基幹産業になりうる製品の登場を待ちながら、座して死を待つよりないのだろうか。カネゴンは性急な結論が大好きです。
以前にも書いたのだけど、色川武大の「私の旧約聖書」に書かれていた「進歩するということは、終わりに近づくということだ」という言葉は、カネゴンにとって最も恐ろしい言葉の一つ。同じ著者の「怪しい来客簿」の傑作中篇「助けておくれ」にも、苦痛に満ちた肝機能検査の後に「どんなことにでも、終わりはあるんだなあ」と自問自答する場面があり、これは著者の基本的な物事の認識方法に深く食い込んでいると考えられる。
物欲を煽る効果的な方法はどうやら人類の宿題らしい。もう少し考えます。