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かなり昔、吾妻ひでおの表紙絵に惹かれて堀晃の「マッドサイエンス入門」を買った(例によって手元にない)。昨今の猪口才なトンデモ叩き本や特撮科学解説本など相手にならないぐらい面白かった。作中、Galaxy誌("Anarog"誌とのツッコミをいただきました)から引用したと称した「Ditch Sunshine の小説」のあらすじがこれまた面白かったが、Ditch Sunshine が「堀晃」のもじりということに気付いたのは随分後だった。正直、短編として十分成立するほどのアイディアとストーリーを、エッセイの中で惜しげもなく消費してしまっていることに驚かされたのだけど、堀晃にとっては普通に短編に仕上げることよりもこういう形の方が性に合っているのかもしれない。特撮科学パロディ解説の最高傑作の誉れも高いラリイ・ニーブンの「スーパーマンの子孫存続に関する科学的考察」のこともこの本で知った。
マッドサイエンス入門の中でも好きな話: アポロ宇宙船が月に着陸したとき、堀晃は職場のTVでNHKを見ていたのだけど、そのNHKの解説が盛り下がることおびただしかったという。着陸した瞬間ですら「
...何か、一言欲しいですね」ぐらいしかなかったらしい。対照的に民放は大変な盛り上がりようで「やった!!やりました!!人類の偉業達成です!!」とやかましかったらしい。堀晃も「民放の方がTVのあり方として正解だった。当たり前のことを面白そうに見せる、これがTVの本質なのだろう」と的確なコメント。