玉木さんが純正律ハードロックというものを企画しているらしい。気になるのは、基本的に平均律にしか向いていないギターで、いったいどうやって純正律を実現するのかという部分。

ハードロックで重要な4度および5度の響きは、平均律であろうと純正律であろうと変わらない。主に変わるのは3度(つまり「ミ」の部分)のはずだけど、フレットやチューニングをどうにかして実現できるものなのだろうか。ジミヘンはチューニングの狂ったギターでも指で強引に音を合わせて弾いていたらしいけど、そういう技ができてかつ純正律が身体に入っているギタリストを養成しないといけないということだろうか。ブルーノート平均律の上にはない音なのだけどみんな使っているから何とかなるのかも。しかし、実際には純正律の「ミ」は、平均律よりわずかに低い。ギターは演奏しながら音を上げる(チョーキング)は簡単だけど、下げるのは無理。果たしてこの難題をどうやってクリアするのかが見物。
純正律を比較的実現しやすいのは人声とかストリングス。これはわかりやすい。トランペットのような金管楽器は原理的に純正律なので、逆に演奏しながら平均律に近づけるという自虐的な努力が必要だったりする。トランペッターの左手の指は、演奏中に素早く微調整するための管に常にかけられている。鍵盤楽器の場合は、昔はわざわざ純正律チューニングをしないといけなかったのだけど、今は純正律がビルトインされたシンセサイザーがあるので随分お手軽になった。

純正律の不便な点は、移調(キーを変えること)や転調が困難になってしまうこと。Cのキー、Dのキーなどそれぞれの純正律があるので、微調整のできない楽器では曲の途中で瞬時に転調するのは現実的に難しい。たとえシンセを使っても、「ジャイアント・ステップス」のように1小節ごとに転調するような曲を演奏することはまず無理だろう。誰かが切り替え専任のオペレーターでもやってくれたらできるかもしれないけど、ずれたら悲惨だ。