Amazon.comから長らく探し続けてきた遠山啓「無限と連続」が届く。帯に「アンコール復刊」とあり、どこに行ってもこの本を見かけなかった理由がやっとわかった。がく。

読み進めていくうちに、この本はカネゴンの知る限り、群論を最も的確に説明してくれていることに気付く。久々のJ指数=98。

少し逆説的ないい方になるが、単位元eの個性はその社会性の内にひそんでいるわけである。(中略)群の各要素は、群から切り離されると単なる記号になってしまう。群という社会のなかにおいて初めてその個性を発揮できるのである。(中略)

たとえば群Gから単位元を取り去ると、もはや群としての資格を失い、ただ計数5なる集合となってしまう。たとえば、あるみごとな詩から、一つの語を取り去ったら、あとに残るのはもはや詩ではなく、単に文字の集合にすぎないのだろう。

うーむ、これは他の数学者が迂闊に真似するとスベってしまいそう。遠山啓以外にこういう文章がキマるのは谷川俊太郎クラスぐらいかもしれない。道理で誰もこの例えを使わないわけだ。究極の一般化である群論が、簡単に真似できそうにない文章で表されているというのが何だかいい。詩歌の心は母心。押せば生命の泉湧く。