前にも書いたような気がするけど日記を検索しても出てこないのでまた書く。「ダメおやじ」という漫画にあった話。

ダメおやじの息子のタコ坊が、意地の張り合いから学級委員に立候補する。タコ坊はこっそり自分で自分に投票するが、クラスの仲のよい女の子が自分に投票してくれると約束してくれたにもかかわらず、開票したらタコ坊には一票しかはいっていなかった。そのことを知っているのはタコ坊だけ。帰り道にその女の子が「せっかくあたしが投票してあげたのに一票しか入らなかったね」と悪気なく言ってのけ、タコ坊は内心激しく傷つく。

後年、菊池寛の「入れ札」という戯曲がこれと同じ構造であることを知り、作者の古谷三敏の古典に対する教養の深さに改めて驚いた。

これまたダメおやじにあった話。

ダメおやじの一家の帰省が終わりに近づき、仕事があるので先に帰ると称してダメおやじが一足先に家に帰ってのんびりしようとたくらむ。帰り道、ダメおやじが立小便をしていてうっかりお地蔵さんにおしっこをひっかけてしまい、そのまま立ち去ってしまう。

怖いオニババのいない家でダメおやじはすっかりくつろぎ、ビールを飲んでうたたねする。その夢の中でお地蔵さんが現れ、「これ、ダメおやじよ。よくも私に小便をかけたな」と無表情に語りかける。ダメおやじが詫びると「許さない。三日のうちに呪い殺してやる」とダメおやじに石の身体をどさりと乗せる。目が覚めるとテレビが倒れてダメおやじの上に覆いかぶさっていた。突然ダメおやじの具合が悪くなり、吐き気が止まらなくなる。

そこに旅の僧が托鉢に現れ、瀕死のダメおやじはその辺にあるものを適当に食ってくださいと僧に言う。僧はインスタントラーメンを食べながらダメおやじの様子がおかしいことに気付き、顔を覗き込むと「あなたには死相が出ていますぞ」と告げる。「何か心当たりはありませんか」「お地蔵さんにおしっこかけちゃったんです」「何ということを。このままではあなたは三日のうちに死にまずぞ。助かりたかったらこの家の戸を全部閉め、朝までこのお経を唱えなさい。朝になるまで絶対に戸を開けてはなりませんぞ」と言い残し、「恐ろしい、私は退散させてもらいます」と逃げ出す。

暗闇の中で十数時間も必死でお経を読み上げるダメおやじ。やがて外から鳥の声や豆腐屋の呼び声がちらほらと聞こえ、そうこうしているうちに通勤のざわめきや自動車の音が聞こえてくる。ついに朝になったとばかりダメおやじがお経を放り出して雨戸を開けると、辺りは真っ暗闇。

数日後、オニババたちが家に戻ると、別人のように痩せ衰え、蝿のたかったダメおやじが部屋でのたうちまわっていた。

題名は忘れたけれど、これは明らかに落語が元ネタ(落語でない可能性もありとのツッコミいただきました)。つのだじろう恐怖新聞にもこれと同じ話があったので、当時の漫画家は当たり前のように落語を下敷きにしていたらしいとわかる。

古谷三敏赤塚不二夫のフジオプロでアシスタント兼ブレーンを務め、赤塚不二夫の漫画でのアイディア出しに多大な貢献をしたとのこと。古谷三敏自身は品の良いネタを好む人だったらしく、赤塚不二夫の漫画の下品なところを余り好いていなかったらしい。

その赤塚不二夫の「おそ松くん」か何かに、O・ヘンリーの傑作短編「よみがえった改心(A Retrieved Reformation)」とそっくり同じ話があったのだけど(「リバイバルチビ太の金庫破り」というタイトル)、あれも案外古谷三敏の仕業だったのかもしれないと今にして思った【よそ見止まらぬおれカネゴン】。

今引用したアスキーアート絵物語だけで、カネゴンつい泣きそうになってしまう【わしらもついついおれカネゴン】。いい話は何度コピペと輪廻転生と換骨奪胎を繰り返してもエッセンスは残ることを痛感。