帰りを新幹線にしようか飛行機にしようか迷った挙句飛行機にし、離陸直後から後悔【フライトフライトおれカネゴン】。唇青ざめたまま前の座席を必死で掴む【高所と恐怖とおれカネゴン】。何とか気を逸らそうとしてBBC Newsなどを聞いても飛行機が揺れるたびに現実に引き戻される。うう。

まだ半分しか読んでいないのだけど「戦争の科学―古代投石器からハイテク・軍事革命にいたる兵器と戦争の歴史」の痛快さがたまらない。内容は「戦争の科学」というよりは「武器の科学史」とでもいう方が近いかも。
第二次大戦中に駆り出されたイギリスの数学者が、ドイツの(工場ではなく)民家を爆撃して何人殺せばドイツの武器の生産性を低下させられるかを算出したというエピソード(実際には何十万人殺しても逆に武器生産性は向上し完全に当てが外れた)。物理学者のみならず数学者の手も、彼らが優秀であればあるほど残らず血塗られていることを痛感【血塗られたいとはおれカネゴン】。
近代的軍隊が創設されたルイ十四世時代のフランスでは、兵士の動作を最初に体系的に振付けたのはルイ十四世お抱えのバレエ振付師だったとのことで(その振り付けは未だに強く影響を残している)、戦争と一見無縁な彼らもやはり血塗られていたことを知る【もっこりタイツとおれカネゴン】。
しかしカネゴンにとって最も衝撃だったのは物理学者ハイゼンベルグの矛盾に満ちたエピソード。ナチス嫌いを公言していたにも関わらずナチスに協力してドイツの原爆開発を指揮したハイゼンベルグが戦後逮捕された後に「自分が陣頭指揮を握っておいてから可能な限り原爆開発を遅らせた」と証言し、それが長らく一般に信じられていた。しかし遥か後にイギリス情報部が封印解除した機密文書によって次のことが暴露された: 逮捕当時、研究関係者が順々に取り調べられている一方で、別室で順番を待っている研究者たちのひそひそ話がイギリス情報部によってしっかり盗聴されていた(実は取り調べはおとりで、このひそひそ話こそが情報部の狙いだった)。それらを総合すると、ハイゼンベルグナチス嫌いどころか紛れもなく本心から原爆開発に取り組んでいた。しかし、(理論物理学者にありがちな話で)ハイゼンベルグにはマネージメントの才能がからっきしない上に研究チームの体制が(他のナチス組織と同様)完全上意下達で硬直しきっており、さらにエンジニアリングについてまったく無知であったために幸か不幸か原爆開発がさっぱり進まなかったというのが真相だったとのこと。敗戦前の一年間は、もぞもぞと加速器小型原子炉を組み立てるふりをしていた。かように、優秀でなければないほどその手は血塗られないことを痛感【血塗られないとはおれカネゴン】。

優秀な者は「進歩することは終わりに近づくことだ」という真言が表す終末への旅程を無自覚に加速するという重大な副作用を常に孕んでいる。そして優秀でない者はこの旅程を減速し人類をより長く永らえさせるという重大な使命を帯びている【言いくるめるとはおれカネゴン】。