ある時、いつものように紐につかまってぼーっと登っていると(カネゴンはぼーっとするのが好きなのだ)、何だか様子がおかしい。どんどん呼吸が苦しくなっていく。気がつくと、首に巻いていた毛糸のマフラーががっちりと紐に巻きとられていた。巻き上げ機に引っ張られる力によって、リフトの紐がごくゆっくりと回転していたせいだ。最初えへへと笑って取ろうとしたが、紐は十分回転しきっていて、マジで取れないことが判明。笑いが消える。坂の上では巻き上げ機がゴンゴン音を立てて待ち構えている。とっさに何をしたらいいのかわからず、紐をゆさぶったりジャンプしたり。何を思ったか必死ででスキーを外そうとしたが首輪が邪魔して手が届かない。助けを呼ぼうにも、運転小屋ははるかかなた(に感じられた)の麓。あと10mぐらいのところで、恥ずかしさも何もかもぶっとばして首を無理矢理後ろに向けて、おそらく一生のうちで一番でかい声で「とめてーーーーー!とめてーーーーしぬーーーーっっしぬしぬしんじゃうーーーー」。本当に巻き上げ機からあと数10cmのところで止まってくれた。ギチギチに巻きとられたマフラーをどうやって外したのか全然覚えていない。