その昔、ラフ・トレードというレーベルから出た「クリアカット」というオムニバスLPの1枚目(全部で5枚リリースされた)を聞く機会があり、たちまちはまった。ジャケットの出来が極めて良いのも好印象。このレーベルは町の1レコード屋がたまたま始めただけのもので、店に出入りする連中の音を集めてオムニバスを作ったら、何とも奇跡的なLPになってしまった(といういきさつだったと思う)。ロバート・ワイアットという底抜けに暗い歌を歌う下半身不随の元ドラマー(ソフトマシーン)とか、おお売れする前のスクリッティ・ポリティとか、アズテックカメラとか、ザ・スミスとかがこのレーベルからごろごろ出てきた。しかし、この方法論を真似したレーベルはことごとく失敗している(水族館レーベルとか)のが面白い。素人を集めていいものができる確率は極めて低いということだろうか。日本のディストリビューターはJapan Recordというところで、当時こういうドロドロしたサウンドばっかり取り扱っていたから有難かったが(有難がっていたのだ)、台所事情は苦しかったと思う。他にPass Recordというところも同じような傾向があった。今検索したら現在形で見当たらないが、もしかすると徳間ジャパンレコードが正式名称なのだろうか。