グルダのベートーベン ソナタ(おじゃる丸の使う二人称にあらず)、楽しみ。それにしても不思議だったのは、グルダの弾くジャズはジャズ側ではまったく知られておらず、クラシック側でもかなり鬼っ子扱いもしくは「初心者にいいかもね」みたいな論調をよくネット上で見かけることだ。何ともったいない。ジャンルの壁に遮られてしまうとは悲しい限り。

実はプログレにもこういう壁が存在する。1.「プログレッシブなジャズ」2.「ジャズよりのプログレ」3.「ロックよりのプログレ」4.「プログレッシブなロック」をすべて聞いている人はおそらくほとんどいない。4.の代表はクイーンなどであり、2.はたとえばジョン・マクラフリンあたりで、通常プログレと言えば3.を指すようだ。そして1.の代表は「スタン・ケントン楽団だが、ケントン楽団はおりしもキング・クリムゾンがデビューする一年前にロンドンツアーを行い、高く評価されたのだ。このライブ録音を聞くと、明らかにクリムゾンに直接的な影響を与えたこと間違いなしの曲がずらりと聴ける。もちろん曲はまったく違うのだが、「Red」のようなアレンジがこんなにふんだんに使われているのは世界広しと言えどもこのバンドだけだろう。先生はきっとこのライブを目撃したに違いない。しかしこのミッシングリンクについてこれまで指摘した文章を見たことがない。

ケントン楽団は昔から二足の草鞋をはいていて、親しみやすいダンスバンドで金を稼ぎ、その金で(売れそうにない)思いっきりプログレ魂あふれるアレンジを思う存分アレンジャーにやらせ(そのためケントン楽団ではアレンジャーのクレジットが最も大きい)、今日のプログレの裾野を形成したりなんかして【適当なことをおれカネゴン】。

ケントン楽団は、トランペットとトロンボーンの中間の音域の音が出る「メロフォニウム」なる奇怪な楽器を無理やり製造させ、メロフォニウムセクション(5人)まで作ってしまった。しかし新顔の楽器は結構音が悪く、前2者と比べると音色も運動性能も完成度が低かった。ある意味両者のよくないところが合体したような楽器になってしまっていたようだ。そのせいか、以後他の誰もこんな楽器を使っているのを見たことがない。写真一枚、資料一つ残っていないのはどういうわけだろう。何しろGoogleで検索して 1 件しか出てこないという有様。これぞプログレ魂。ヒデキ指数=130。

ケントン楽団の最もプログレ色が強い3枚組は Creative Record というレーベルから出されたが、ここが火事を起こしてしまい、マスターテープが燃えてしまった。そのため今に至るまでCD化されていない。南無阿弥陀仏カネゴン、怖いよ今回】。