水木しげるあれこれ

またもや関係ないけど、色川武大が(確か「怪しい来客簿」あたりで)書いていた話【またまたそれかおれカネゴン】:

生家の近所に、その近辺の食堂の悪口ばかり吹聴して回っているおやじがいた。「ええ、あすこの食堂もどこそこの食堂も表は立派だけど一歩裏に回れば蝿はブンブン虫はニョロニョロ、あれを見てしまったらああた、恐ろしくて外で飯など喰えるもんじゃありません。いいですか、長生きしたかったら外でものを食べないことですよ。」

ところが、数日もしないうちに他ならぬそのおやじがコロリと死んでしまい、葬式が執り行われた。私はこれを思い出すたびに、自分ではどうしようもないほど笑いがこみ上げてしまう。道を歩いていて思い出してしまい、その場で吹き出してしまったことすらある。そして、笑いを堪えられないほどおかしくてたまらないことは、実は最も恐ろしいことでもあるのだ。