つまらんことを考える【ゆるくてぬるいおれカネゴン】。物理ではエネルギーとかいろんなものが保存されることになっているけれど、経済学では何が保存されるのだろう。

この言い方に習えば、色川武大は「一人の人間の運は保存される」(一生の長さで積分すればゼロになる)という信念を持っていたことになる。本人も書いていたけれど、それが誰にとっても正しいかどうかは大きな問題ではなく、彼本人が何らかの瞬時な判断(主に博打)を行うときに、なるべく状況や体調によってぐらつかない、自分自身の偏見や好みの介入を排除した判断の根拠として採用していたらしい。心に絶対者を持っている人なら、それを不動のものとして判断の根拠にできるけど、色川武大自身は無宗派だったので、自分なりにこういう心の絶対者を編み出したのだろうとカネゴン勝手に考えている。

そして晩年には「一人の人間の運には、その前の世代(先祖)からの運の蓄積もある」というふうに少し考え方が変わっていた。つまり一生の長さで積分しても運はゼロにならないし、今の自分にもたらされている運は、先祖がためた運なのかもしれないということなのだけど、この場合どちらの考え方であっても、人間が自分の意思で実行できることなどたかがしれている、つまり自分の力ではどうにもならないことの方が多いという、意外に謙虚な結論にたどりつくのが面白いところ。