「単に物知り」とか「単に暗算が得意」とか「単におしゃべり」とか「単に仕事熱心」とか「単にプログラミングが得意」とか「単に口が悪い」「単に批判好き」「単に論理的」というレベルと明らかに次元の異なる、本当の意味で「頭の良い人」というと、カネゴンが思い付くのは、三十年ほど前に高校生にして「劇画ヒットラー」の原作を担当したGさんしかいない。カネゴンは会ったこともないですが、以下のエピソードからそれを確信するに至る(例によって記憶から):

Gさんが大学生ぐらいのときに戯れに入会した右翼団体で、「貴様はヒットラー信奉者だそうだが、ヒットラー天皇陛下とどっちが偉いと思っておるか、ああん?」と尋ねられると、Gさんはまず「そんなこと、決まってるじゃないですか」と落ち着き払って答え、回りが逆に慌て始める。
Gさんは十分に間を取ってから、「ヒットラーがどんなに優れていたって、しょせん人間ですよ。神である天皇陛下と、比較のしようがないじゃないですか」。

自分の価値観(Gさんは別に狂信者でも何でもなく、むしろそれとは正反対の人なのだけど)を損なうことなく、かつ相手の価値観を最大限に尊重し誰一人傷つけず、究極に洗練された関節技を決めたがごとくその場を一瞬で完全に支配し、なおかつ自分の力量にまったく溺れることなく速やかに立ち去る、その手腕にカネゴン唸ってしまった【唸って終わるおれカネゴン】。この頭のよさはもはやスーパーウェポンと言ってもよく、これほどの腕前なら大使閣下としてどこに出しても恥ずかしくなく、敵に回したらこれほど怖い人もいないだろうと思えてしまう。