そうして掘り出した音源の中に、大昔にテープにコピーさせてもらったフリードリッヒ・グルダ(クラシックのピアニスト)の大作アルバム「Message from G」と「Works」があった。コピー元の音源の持ち主が自分の趣味で曲順を並べ替えていた上に、カネゴンがインデックスを正確に書き写していなかったため、どれがどの曲なのかわからなくなっているのが多い【それもいつものおれカネゴン】。

グルダというピアニストは、とても音が小さいために現在ではめったにお目にかかることのないクラヴィコードという繊細極まる楽器にピックアップを取り付け、レコーディングでもライブでも縦横無尽に使いこなしていた。クラヴィコードが他の鍵盤楽器と異なる最大の特徴として、弾いた後に鍵盤に力を込めることで繊細極まるビブラートをかけることができる。しかしこの機能は諸刃の剣で、弾く人の技量が足りないと音程がぐにゃぐにゃに乱れてしまう、とんでもない暴れ馬でもあったりする。
mp3変換記念ということで、グルダのオリジナル曲「Aria」のライブ演奏からごく一部を抜粋したものを一聴してみると【無断公開おれカネゴン】、とても鍵盤楽器とは思えない(下手をするとスパニッシュギターのようにすら聴こえる)強烈なビブラートや切れ味のよさに驚きを通り越して呆れかえってしまう。グルダは右手でクラヴィコード、左手でピアノを演奏しながら、曲が最高潮に達したところでドイツ語らしき言葉で茶目っ気たっぷりに何やらつぶやき、客をずっこけさせるという離れ業までぶちかましている。実際には何と言っているのだろう。
さらにグルダは、このクラヴィコードワウフェイズシフターをかけ、ジャズまで演奏してしまった。これと同じぐらいかっこいい「A Night in Tunisia」はミシェル・ルグランのぐらいしかカネゴン知らない。
ネットで検索した限りでは、これらの強烈な演奏が収録されたグルダの「Message from G」というLP6枚組のアルバムは未だにCD化されていないらしい。うう。どなたかCD化してください。