玉木宏樹によると、昔と今ではバイオリンはまったく違う楽器であるらしい。

大体ストラドの時代と今ではヴァイオリンの奏法が全く違うし、楽器に対する負荷も全く違う。

昔は天井の高いそれほど広くない所で、響きを大切にしていたから大きな音は必要なくピッチも今よりかなり低かったし、指板自体も非常に短くて、今のような高音部は演奏しなかったので、弦は裸のガット線、それもかなりフニャフニャだったし、弓の張りも強くなかったから、駒に対する圧力も全然大したことはなかった。

それが年がたつごとに指板が長くなり、大ホールの隅から隅まで音が届くようにピッチが高くなり、弦も金属巻きになり、現代では4弦の駒に対する圧力は約2トンといわれている。この状況では昔のストラドはすぐに壊れる。

その処置として、ヴァイオリンの胴体の中には力木というストラド時代には考え付きもしない補強が施されている。つまり昔のストラド時代と今では、完全に楽器自体が違うのだ。