気が遠くなった中、巻末の「神経の働きを行列で表現する」をちょっと見たくて「進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)」という極めて刺激の強い本を衝動買い【ますます遠くにおれカネゴン】。
内容もさることながら、著者のライター/講師としての腕前が超一級であることを思い知らされる。途方もなく微細かつ専門的な神経細胞の働きから、「意識とは何か」非常にマクロな話まで、どんな話をしていても常に大小さまざまなストーリーが一貫して流れていて一発の無駄玉もなく、読者が一瞬も退屈できないように構成されている。話がたとえ脱線しようと、この強力なストーリーによって話がただちに本筋に引き戻され、また何事もなかったかのように進む【脱線爆発おれカネゴン】。
面白い本や芸術によくある「無茶苦茶なストーリーを著者のカリスマと表現力で強引にねじ伏せる」ことによって生じる説得力とまったく逆で、王道でありながら真似することが極めて困難。一般人がこれを習得するには、必殺の魔球を少なくとも5種類軽々と投げられるようになるのと同じぐらいの超人的な努力が必要とカネゴン推測。
単に弁が立つとか、単にいろんな事を知っているとか、単に頭が切れるとか、単に表現力に優れているとかいうレベルを超えた、学者にあるまじきストーリーの構成力は、もしや世界征服すら可能にするのではないかと一瞬錯覚させるほど【分け前要求おれカネゴン】。すべてのシナリオライター必読。
これを音楽でやると、たぶんキリンジになる。