千字文の注釈にあった話より。

蘇秦は十年の間遊学したが、出世することなく家に帰った。兄嫁は秦を見ても立ちもせず、妻は機(はた)から降りもしなかった。秦は嘆いて「大丈夫も出世が出来なければ、妻も兄嫁さえも軽んじるのだ」と言い、やがて去って鬼谷先生のもとに身を投じ、学問に励んだ。眠くなれば錐で太股を刺し、三年も経たぬうちに学問は完成した。斉に使えて宰相となり、ついには六国の宰相にまでのぼりつめて家に帰った。
兄や兄嫁が勢ぞろいで遠くまで出迎えに来た。秦が兄嫁に「昔は私を見ても立ち上がりもしなかったのに、今は六十里も先まで私を出迎えに来てくださったのはなぜですか」と言うと、「今度はあなたが六国の宰相となって帰ると聞きました。名を天下にあげ、祖先の誉れを明らかになさったのですから、迎えに来ました」と言う。
秦は「私の栄達は、兄嫁であるあなたのおかげです」と言った。

この年になって、最後の秦の科白が強烈な嫌味だということがカネゴンにもやっとわかるようになってきました【通じてなかったおれカネゴン】。