脳の学習力―子育てと教育へのアドバイス」からかいつまむ。以下脳はすべてなずきと表記。

  • 「大人になったらなずきは発達しない」という従来の学説は既に否定されている。大人でも学習するとなずきに目に見えて変化が生じる。ロンドンのタクシー運転手は普通人に比べて地図の記憶に使っている領域が極端に発達している。
  • どれほど高度に習得した技能でも、三ヶ月何もしないでいると揮発する。
  • 逆に、一日わずか一分でもよいので毎日繰り返していれば忘れない。実際に行えなくても、頭の中でイメージするだけで効果がある。
  • 睡眠をまともに取らないとなずきの能率が落ちる。
  • 適度な運動は、なずきの能率を確実に高める。
  • 昼寝はなずきの能率向上によい。寝ないでぼーっとしている場合は効果なし。
  • 嫌な経験・怖い経験の方が忘れにくい。感動や驚きや怒りや悲しみや復讐心など、情動とセットで覚えたことは非常に忘れにくい。
  • 「なずきのよくなるくすり/食べ物」はほぼインチキか裏付け不足。どれもプラシーボ効果を上回っていない。
  • 欲しいものを我慢できるかどうかを幼児に対して実験したところ、我慢できた子供はその後も成績がよく優れた社畜になれる傾向がある。
  • 注意欠陥多動性障害(ADHD)の最大の特徴は「友達がいない」こと。その扱いにくさのために同年代の子供にすら疎んじられる。
  • 相当多くの子供が誤ってADHDと診断されている可能性がある。行動の抑制に重要な前頭葉は成人するまで(成人しても)発達を続けるもので、子供のなずきが注意散漫なのはある程度仕方がないが、それを何とかするのが教育。
  • ポルトガルの田舎には、歴史的社会的な理由でまったく読み書きを教わらずに育った人が多数いて、彼らのなずきを調べたところ、当然ながら読み書きできる人とはなずきの働きが大きく異なっていた。無意味な単語を発音させてみると、読み書きのできる人は左側頭葉であっさり処理して捨てていたのが、読み書きのできない人は前頭葉がフル回転してその無意味な単語を何とか記憶から検索しようとしていた。