不景気が始まる兆候:

梶原 「名古屋は、最近どうなんですか?」
運転手 「ひどく悪いです。地元では、半年前までは名古屋の一人勝ち。さすがトヨタの城下町と浮わついてたのがうそのようです。実は、私は、1年も前に今の状況を予測していたんですよ」

梶原 「超能力者みたいですね」
運転手 「30年以上この仕事やってると、不況に突入する予兆が見えるんです。その頃すでに、はっきりとした兆候が3つあったんです」

梶原 「ほお。1つ目は?」
運転手 「確かに水揚げは好況時と変わりませんでした。でもね、私は、おや? と思った。お客さんのお金の払い方が違ってきていたんです」

梶原 「どういうふうに?」
運転手 「会社のタクシー券が極端に減り始め、現金で払い、領収書を持ち帰る人が増えた。会社が交通費抑制のため、あえて社員の事務手続きを煩雑にしてきたからでしょう。リーマンショック以降は、それもなくなりましたが」

梶原 「2つ目は?」
運転手 「トヨタ関連の会社にお乗せするお客さんの、1台に乗る人数が、それまでの3人が2人になり、1年前からは1人というのが増えた。すでに関連会社や取引先では、出張旅費の締め付けが始まっていたんですね」

梶原 「3つ目は?」
運転手 「中央分離帯に、コンビニ弁当のトレーの投げ捨てが目に見えて減ってきた。モラルがアップしたのなら結構なことなんだけど、私は違うと思った。本当に好況の時は、物流も活況を呈する。配送のドライバーは大忙しで、いちいち車を降りてご飯を食べる暇もない。いけないとは知りつつも、わずかな時間にコンビニ弁当をかき込み、思わずポイと捨ててしまう人だっていた。ところが1年前から、そういう慌ただしい光景が見えなくなっていた」

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