ガメ・オベールの日本語練習帳v_大庭亀夫の休日が一から十まで素晴らしくてはまっている【おさるのようなおれカネゴン】。
内容もさることながら、「名文にならない」「美文にしない」ように極めて注意深く書かれているところが本当によい。名文美文の困った点は、それ自体に魅力が生じてしまうがために、内容がついつい置き去りにされてしまうところで、声がよすぎてどんなくだらない歌詞を歌っていても気付かれない歌手のようなことになってしまったりする。
見方を変えれば、切れ味のよすぎる才気走った言葉を注意深く避けているとも言え、切れ味よりも鈍器で殴られたようなボディブローが前面に出ていて、よく体重が乗っている。
かといってビジネスレポートのような単調さに陥ることもなく、一歩間違えると嫌味とも受け取られかねない優雅な生活を、一見がさつなようでいて実に腰の低い文体で淡々と綴る。そして内容がちっともめそめそしていない【めそめそ暮らすおれカネゴン】。
どんなお方かはご存じないのだけど、もしかしたら怒らせたら怖い人かもしれない【直立不動のおれカネゴン】。