カネゴンは好きでないものをめったに表明しないのだけど、Excelというソフトウェアに対してだけは近年になるほど憎しみが募ってしまう【可愛さ余らぬおれカネゴン】。なおWordに関しては諦めの心境です。

これまで、いったいどれほどの生産性・創造性がExcelによって無駄に地面に吸い込まれてしまっているだろうか。

Excelの恐ろしさの1つは、それをいじっているだけで何か仕事をした気になってしまうところだったりする。実際にはExcel操作の9割5分は単なる画面レイアウトの微調整であり、ほんの僅かな操作で印刷レイアウトはガタガタに崩れてしまうために、皆大変な苦労をして何かするたびに毎度毎度レイアウトを維持するはめになる。

Excelブックは、百歩譲ってもせいぜい中間生成物として最小限に使うだけにとどめるべきであり、Excelフォーマットのまま顧客に渡したり、地震データのような重要なデータをExcelフォーマットで公開したりするのは重大な不敬罪に相当する。カネゴンは、Excelフォーマットはそれが何であれ納品物として認めません。

Excelの始末の悪さは、主に「いくらでもフォーマットを汚くできる」「使い続けると必ずフォーマットが汚くなる」「そもそもフォーマットというものがない」という点に集約される。この凶悪な特性を生み出しているのは、表の右と下にほとんど何の制約もなく、だらしなく行と列が続いているという設計だったりする。長年使われ続けたExcelブックはガンジス川の水よりも汚濁に満ち満ちており、目に染みるほどに耐え難い腐臭を発し、それを渡された者の生命すら奪う【バイオハザードおれカネゴン】。この特性を回避するには、Excelブックを中間生成物としてのみ注意深く利用するという情けない運用を行わざるをえない。

Excelは単なる表計算ソフトとしての性能しか持ち合わせていないにもかかわらず、事実上レイアウトソフト、データ交換プラットフォーム、フレームワークとして使われてしまっている。必然的に、そのための仕組みもパワーも絶望的に不足する。明らかにスペックを超えており、使われ方に無理があるのに、有毒なインターフェイスがそのような無理な使い方へとユーザーを誘惑する。かの有名な「Excel方眼紙」も明らかにこの有毒インターフェイスの産物。

さらにExcelは改良・進歩がこの20年ほとんど行われておらず、今後も進歩が見込まれない。Excelの最初期に「ドラッグアンドドロップ」という当時としては画期的な操作が世に先駆けて導入されたのが唯一のイノベーションであり、その後何の進歩もない。

よく知られているように、Excelの関数、特に統計関数には未だに重大なバグが残っているにもかかわらず、一向に修復されない(これも)。Excelで統計処理を行なうものはそれだけで牢屋につながれるか焼き印を押されなければならない。

Excel・Word・PowerPointはいつまでたってもパーソナルな使用しか想定されておらず、共同作業がまったく考慮されていない貧弱なままだったりする(Google Spreadsheetはこの点だけ少しまし)。Excelファイルを同時に複数のユーザーが開いて更新したときにかなりの頻度でファイルが破損するし、共同作業中にフォーマットを壊さないようにする仕組みも存在しないあてにならない。多くのExcelファイルを串刺しで検索する公式な手段もない。

Excelのさらに恐ろしい点は、それを渡された者に大変な潜在コストを強いるところだったりする。Excelは利用者に対しフォーマット維持のために大変なコストを強いているにもかかわらず、そのコストは作成者ではなく、それを渡されたものにすべて無自覚に押し付けられるため、作成者がそのことに気付く機会がない。

前回の日記でも引用したように、人類は平気で1000年でも間違い続けることができてしまうので、このままでは100年後も人類が揃ってExcelに人生を略奪され続けることになりかねない。人類のため、いやあらゆる生命のため、いや銀河系の平和のため、一刻も早くExcelを撲滅するためにカネゴンが生まれてきたという自覚が最近生まれてきました【駆逐を愛するおれカネゴン】。

試しに「Excel alternative」でググってみるとよい。誰一人、この汚らわしいソフトウェアを駆逐し置き換えるような優れたソフトウェアを作ろうとしていないことを思い知らされるだろう。表計算ソフトウェアのコンセプトそのものが根本的な問題をはらんでいるので、別のフリーな表計算ソフトがあればよいというものではない。なのでOpenOfficeGoogle Spreadsheetならよいわけではなく、みな同じ問題を抱えている。

どうして誰もExcelを超えるものを作ろうとしないのだろう。皆Excelの毒素が回って脳がパンチドランカーにでもなってしまったのだろうか。困ったことに、Excelなど必要としないリテラシーの高い人々はたいていの場合単にExcelに関わらないようにするため、誰もExcelよりよいものを作ろうという発想に至らない【他力を頼むおれカネゴン】。

繰り返すけど、Excelは既に単なるアプリケーションではなく「メタな」フレームワークとして身の丈に合わない「アプリケーション構築」をやらされている。Excelの上に不格好極まりないオレオレアプリケーションが構築され、その使用を取引先に強要しているというのが認識として正しい。このボタンの掛け違いがどれほど多くの不幸せを生んでいるか。少なくとも、Excelをアプリケーションと呼ばずにフレームワークと呼ぶことで、こうした勘違いを正すことから始めなければならない。

Excelはまさにソフトウェアの巨人がもたらした恐るべき呪いであり、人類の生産性を著しく引き下げて歴史に残る惨事をもたらし、皮肉にもそれによって多くの無駄な雇用を着々と発生させ続けている。Excelの毒素は感染性が高く、そのファイルに触れた者はことごとく連鎖反応的に汚染される。

よくいっておくが、カネゴンたちは、太陽が赤色巨星となる前にExcelを駆逐し超える上位のソフトウェアを創りださねばならない。Excelに呪われし民を一刻も早く救い、天の国に導かねばならない【昇天ラブとはおれカネゴン】。神に呪われしExcelフォーマットに閉じ込められたデータをそこから救い出し、心から侘びて丁寧に供養せねばならない。それはまだこの世のどこにも存在しておらず、未だ生まれる気配もない。