最早忘却の彼方かもしれないけど、インターネットが商用化される寸前の頃ににQuickMailというMacintosh用のメールソフトがあった。当時は独自形式でAppleTalkのみに対応し、SMTP/POPの波に乗り遅れたために今ではすっかり日陰者だけど、自分で好みのテンプレートを作成することができ(サウンドまでつけられた)、当時としてはなかなかよくできていたと思う。

カネゴンはそのQuickMailサーバーの管理をしていたことがあり、当時最も深刻だったのは「アドレス帳の管理」だった。お客さんは全国各地に無数の支店と営業所と現場を持ち、それぞれにQuickMailサーバーが配置されていたのだけど、人事移動が極めて頻繁なために毎月膨大なアドレス帳を更新しては配布しなければならない。ブラウザもディレクトリサービスもなく、データベースで組むコストもかけられなかった当時はこの手間が馬鹿にならず、それ専門の社員がいたほどだった。

現場のエンドユーザーもこの繁雑さに閉口し、あるとき「あのな、いっそ支店ごとにサーバーを立てるのをやめて「あ」で始まる人のサーバー、「い」で始まる人のサーバーみたいにできんかな」と言われたことがあった。その前にSMTPメールが一気に普及してしまったので実現はしなかったけど、そのアイディアだけはなぜかずっと気になっていた。続きはそのうちに。