8年ほど前に通っていた神谷町の歯医者はかなりの名医で、治療前に懇切丁寧にコンサルティングしてくれるという(当時の上司による)評判を頼りに通った甲斐があった。会社の他の同僚も何人か通っていたのだけど、他の人は美人揃いの看護婦を目当てに通っていたと後で知る。カネゴンはといえば、麻酔注射の最中に思わず顔を動かして先生に叱られるありさまだったので、それに気付く暇もなかったのが返すがえすも残念。

当時から少し不思議だったのは、トイレに行くためにレントゲン室の後ろを通る瞬間、必ずカネゴンの平衡感覚が崩れ、めまいがしたこと。レントゲン装置が発する磁場のせいなのだろうか。カネゴンの内耳に砂鉄でも混じっているのだろうか。電磁波過敏症ではないと思いたい【病は気からのおれカネゴン】。

いつだったか、ジョンとヨーコが製作した、明らかにヨーコが主導権を握ったと思われる当時のプロモーションビデオを見たことがある(曲目不明)。ヨーコが深いエコーのかかった単調な声で「Don't come to me」と延々繰り返し、ジョンが無表情にチェスの駒をパクっと食べたりする映像だったのだけど、当時のカネゴンが絶不調だったせいか、見ていてあまりの寒々しさと不吉さに息が苦しくなったのを覚えている。あれをまた見ろと言われたら、カネゴンたぶん裏口からこっそり逃げ出してしまうかもしれない。

    • >ニューヨークを観光中、美術館でオノヨーコ展を見たことがある。上から見ると渦巻状になっている巨大な壁(つい立て)のオブジェがあり、客はその壁の入口から入って渦巻の中心まで進み、そこで極限まで狭くなった壁にがっちりと挟まれ、どん底の気持ちになれる仕掛けになっている。カネゴンも、つげ義春が夢の中でオバケから逃げようとして細い通路に挟まってしまったときと同じような何とも言えない絶望的な気持ちを味わうはめに。それ以来オノヨーコおよび不吉さをフィーチャーするアート関連には近寄らないことを心に誓って現在に至る。