10年以上も前の年末に、紅白の前に恒例として放映されていたNHKのマジック番組で、一度度肝を抜かれたことがあったのを思い出した。

舞台の上で大勢の観客を前に、マジシャンが手品を披露しているところを、ステージの後ろから固定カメラが様子を中継している。マジックは、低い台に置いた西洋棺桶から人を出すというもの。マジシャンは棺桶を開けて客に見せ、中身が空であることを示し、再び棺桶を閉じる。とそのとき、棺桶の裏側で、観客から見えないステージの床が開き、男(サクラ)がこっそりと這い出してくる。棺桶の裏は案の定蓋が開くようになっていて、男はこっそりその蓋を開けて棺桶の中に忍び込む。この様子は固定カメラで手に取るようにわかるが、客はまったく気付かない。そしてマジシャンが棺桶に布をかけて呪文を唱え、ドラムロールの鳴り響く中、おもむろに棺桶を開くと、派手な音楽とともに中からセクシーダイナマイトな水着女性が華やかに登場。種明かしだとばかり思っていたカネゴンは、あまりのことに一瞬取り乱してしまった。今から思えば、マジシャンに嫌われがちなTVカメラを見事取り込んだ、天晴れとしか言いようのない仕掛けだった。