今引用した前頭葉うんちくから:

一般の知能テストで調べられる能力は,いわば「1つの正答」が存在するという「集中思考」の要求されるものですが,前頭葉損傷患者は解答にいくつもの可能性が存在するような「拡散的思考」の要求される課題において障害を示すのです。例えば「新聞紙の使い道として考えられるものを出来るだけたくさん挙げて下さい」というような質問に対して,前頭葉損傷患者は一般の人よりかなり少ない数しか挙げられないのです。

してはいけないとされること,あるいは通常なら普通の人はしないようなことを,躊躇なくしてしまう傾向にあります。何かが目に入ると,それで何かしなさいとも,手を触れていいとも言われていないのに,躊躇なくそれを取り上げ,いじる,というような行動が損傷患者にはよく見られます。

食事の献立を考えて買い物や炊事をする段取りをつける,という短期的な計画行動から,就職して結婚して家を建てるという長期的な計画設計まで,いろいろなレベルで障害を示します。
(中略)「順序だった計画を立てたり」,「話を最後まで終わらせたり」,「重要な項目と些細な項目を区別したり」,あるいは「目標と無関係なことがらを持ち込まないようにしたり」することに明らかな障害を示すことを見出しています。例えば海外旅行の計画を立てる,というような場合,スーツケースに荷物をつめるという優先度が高いことは重要視しない一方で,親戚にどんなおみやげを買うのか,というような瑣末なことを重要視したりする傾向が見られるのです。

ダマジオはこうした患者の障害の特質を詳しく調べるために「ギャンブルゲーム」を用いた実験を行っています。
(中略)始めは健常者も損傷者もAかBの組のカードを多く選びます。しかしこれらの組のカードを選ぶと時々痛い目に会うことを経験すると,健常者は次第にCかDの組のカードばかりを選ぶようになります。一方,損傷患者は金券をどんどん失いつつあることがわかりながら,相変わらずAかBの組のカードを選び続け,最終的に大きな損失を被ることになります。

遠からぬ将来、就職活動時やオリンピック出場時に輪切り写真を提出させられるときが来たらどうしよう。