鉄門海上人伝―愛朽つるとも (上巻) (レジェンドコミックシリーズ―とみ新蔵作品 (10))」に唸る【上巻だけとはおれカネゴン】。鉄門海上人とは、今も見事に残る即身成仏で世に知られた高僧【成仏目指すおれカネゴン】。
作者のとみ新蔵は、あの平田弘史の8つ下の弟であり、ついつげ義春つげ忠男のように兄の方が名作が多いように思われがちなのだけど、カネゴンの中では既に、ついつい趣味に走ってなかなか新作を描かない平田弘史よりも弟のとみ新蔵の方が上位に位置している。
まず、とみ新蔵は(まっこと失礼ながら)御年に似合わないほど、可愛らしい女性となまめかしい女性を見事に描き分けられる。今時の萌え絵など、きっととみ新蔵にとっては造作もないこととカネゴン勝手に推測する。「鉄門海上人伝―愛朽つるとも (上巻) (レジェンドコミックシリーズ―とみ新蔵作品 (10))」が何と「女性セブン」に連載されたとあるのは、決して偶然ではなく、とみ新蔵のこの画力があってこそだったと思う。
さらにとみ新蔵は、近年になって漫画のために薩摩示現流の剣術を学ぶほどの研究熱心さで、これによって剣術に途方もない迫力が生まれている。普通の時代劇漫画では決して見ることのできない異常な(しかし極めて実践的な)構えが完全に漫画に取り込まれている。村上もとかの名作「六三四の剣」のような流麗な剣法と違う、戦場でどんなことをしてでも相手を仕留めるための実践的な古武術の匂いが画面からぷんぷんと立ちのぼるのがカネゴンにとってたまらない【イッたきりとはおれカネゴン】。