内容そのものをかいつまむときりがないのだけど、いろいろと気になる部分があるので、そのホーマンスが元ネタにした行動心理学者スキナーの「5つの命題」をカネゴン好みの表現にごっそり改めて引用【ネタと呼ぶとはおれカネゴン】。

  • 成功命題:人は、何かを実行してうまくいった(=報酬が得られた)回数が多いほど、同じことをまた行おうとする可能性が高い。
  • 刺激命題:人は、前回実行してうまくいったこととよく似た状況に出くわしたら、うまくいったときと同じことをまた行おうとする。状況が似ていればいるほど、また行う可能性が高い。
  • 価値命題:人は、ある行動が自分にとって価値が高いと信じる度合いが強いほど、その行動を実行する回数が増える。
  • 剥奪飽和命題:人は、何かを実行した見返り(報酬)を受ければ受けるほどそれに飽きてしまい、それに連れて見返りの価値が下がってしまう。
  • 攻撃是認命題:人は、期待していた見返りをもらえなかったり、納得する暇もなく懲罰を受けたりすると、怒り心頭に発して攻撃的な行動を取る。この衝動が収まるまでの間、この攻撃的な行動を達成することがその人にとっての全面的な価値となり、他の弱々しい価値がしばしば上書きされる。
  • 攻撃是認命題2:人は、ある行動の結果思い通りの(または期待以上の)見返りを得ると、その行動に価値を感じ、その行動を正当化する。

(攻撃是認命題2は、まさに万引きの心理そのものだったりする)
しかしカネゴンアイにはこれでもまだ冗長に見えてしまう。実際は成功命題と攻撃是認命題の2つで十分に思える。
他にも、成功命題では報酬の回数と次回の行動の可能性が比例するかのように読めてしまうのだけど、報酬を一億回受けたら行動の可能性も一億倍になるかというと、そうは思えない【下らぬツッコミおれカネゴン】。それを本書ではたとえばA=kR(Aは行動の量、Rは報酬の量)のようにさらりと書いていて、そんなに直線的な関係になるのかどうか冷や冷やしてしまう。もしかしたらカネゴンだけが知らない暗黙のルールにつまづいているのだとしたらどうしよう【あるある無知とはおれカネゴン】。両者は少なくとも対数関係またはロジスティックス曲線の関係になりそうな予感。
もしかしたらカネゴンが見落としただけなのかもしれないのだけど、人間の性格のばらつきということについてはまだホーマンスの学説には盛り込まれていない様子。ピンカーの「人間の本性を考える」でも、人間の性格の半分は生まれつき決まってしまっているということが強力に主張されていたので、こうした点もぜひ盛り込みたい。