その鬼谷先生も得意だったという観相術という技があるそうで、要するに人相や立ち居振る舞いからその人物の本質と好みと戦略を一瞬で検出して自分の有利に役立てようというものらしいのだけど、ネットでとりあず検索した限りでは、「顔の大きい人はずうずうしくて支配的な人」など、ベイズ推定を最初の一回だけで終わらせてしまったかのような箸にも棒にもかからない代物しか見当たらない【かからぬ者とはおれカネゴン】。
カネゴンの知る限り、割合は極めて少ないのだけど観相に長けた人物というのは、いる。この日記にたびたび登場するJN師匠は、鬼谷先生もかくやと思わせるほどの切れ味の鋭い観相を、本人すら自覚せずに稲妻のように繰り出していたのをしみじみ思い出す【瞬殺秒殺おれカネゴン】。
それよりレベルと精度と志は落ちるのだけど、いわゆる「女の勘」のように「(何の根拠もないのだけど)絶対この人浮気してる!」という直感が突然背中を走るとか、麻雀で牌を捨てようとした瞬間ビビビっと嫌な予感が根拠もなく脊髄を駆け抜ける【そのまま振り込むおれカネゴン】というような現象は、普通の人にもままある。しかしこれらの観相や直感や予感は、ベイズ推定を嫌になるほど繰り返すことによって獲得されたものかというと、カネゴンにはそうは思えない。
「顔のでかさ」などの代表的なパラメータだけをいくつか取り出してそれをさまざまなツールにかけて推定を繰り返すという現代までの統計的手法ではなく、リストアップするだけで一生が終わってしまうほどの膨大なパラメータを脳の下半分と五感を総動員して力技で並列処理し、脳の真ん中へんでそれらを捨てて捨てて捨てまくって、それでも捨て切れないほど強い信号がごくまれに脳の上まで浮かび上がってくる、という方が観相という技の実体に近いような気がする。
ちゃんとわかっているわけではないのだけど、脳の回路は基本的に信号を捨てる方向捨てる方向に配線されているはず【わからず書けるおれカネゴン】。
とにかく観相術は万人に教えることも万人が教わることも本に書くこともできず、億に一人ぐらいの素質のある者の素質を鍛えて伸ばすぐらいしかできないということでいいだろうか【叩いてつぶすおれカネゴン】。