古本屋で矢口高雄の自伝的漫画「9で割れ!!」の2巻を見つけて思わず購入【歯抜けで買うとはおれカネゴン】。
その中で、矢口高雄の銀行時代の後輩が、バーのママに入れ込んでいるうちに銀行の金にちょっぴり手をつけてしまい、それが発覚して辞職に追い込まれる場面があった。

上司「矢口くん、私は銀行マンとしての長年の経験から言うのだが、一度銀行の金に手を出した者は、その後も必ず同じことをする...!
彼をこの銀行に置いておくわけにはいかんのだよ。」

このことは、いったいどのぐらい普遍性があるのだろう。横領経験者をしばらく放し飼いにして保護観察とかもやってみたのだろうか。ジャンバルジャンみたいに鮮やかに立ち直るケースは本当に少ないのだろうか【治ったふりとはおれカネゴン】。
世間に暮らす者の戦略としては、たぶん「一度犯罪を犯した人間は前科者として常に冷たくあしらう」というのがゲーム理論の見地から言っても最も合理的ということになってしまうのだと思う。前科者の更生を期待して積極的にかかわるのと、前科者を疎んじて遠ざけるのとでは、前者の方が勝率で言えば分が悪そうではある。というのも、後者のように遠ざけてしまえば、前科者が更生するかどうかに関わらず、少なくとも目に見えて損をすることはないので。
この戦略の良し悪しは、実際の再犯率とはたぶん無関係な気がする。
前科者がどこに行っても前科者としてしか扱われないためにやけくそで前科者として振る舞うという負のフィードバックも明らかに存在していて、この間どこかに書いてあった「刑期を長くしても短くしても再犯率は変わらない」という統計もその負のフィードバックの影響下にありそう。そういうフィードバックを完全に取り除いた状態で前科者がどのぐらいの割合で立ち直るかについて統計はどこかにあったりするだろうか。

しかし、これらデータでは「再犯者」が過去にどのような犯罪で逮捕されたのか区別していないという問題があるばかりか、数値自体「再犯者率」と呼ぶべきものであって、「一度犯罪をおかして逮捕された人が、ふたたび犯行に及ぶ確率=再犯率」とは直接関係がない。仮に性犯罪の「再犯罪者率」が高くても、それは性犯罪の「再犯率」が高いことの証拠とはならない。なぜなら、再犯率が低くても少数の加害者が繰り返し犯行を重ねていれば「再犯者率」は高くなるからだ(なんばりょうすけ, 2005)

http://macska.org/meg/recidivism.html