芸術とは、我らが隣人の営為である。作品鑑賞の際に、この前提を失念してはならない。
 若い頃は、常人には及びもつかない天賦の才に恵まれた者だけが、芸術作品を制作できると信じていた。それ故、欠点が目に付くと、どうしても批判的にならざるを得なかった。天才なら完璧なものを作れと。しかし、今でははっきりとわかる。芸術作品の大半は、知性も感性も、一般市民とそう大して変わらぬ者たちが苦労して作り上げているのだと。どうしても意に満たぬ所、技巧の及ばぬ点が現れてしまう。これは、人間の営為である以上、必然的な結果であり、責めるわけにはいかない。むしろ、作品を鑑賞する側が、不足する部分を補完するように努力すべきである。すなわち、芸術作品とは、現実には存在しない完璧なものを目指して、芸術家と鑑賞者が共同作業によって作り上げていくものである。くれぐれも、あら探しばかりする愚かしい批評家くずれに成り下がってはならない。

http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/nikki/2003_2.htm#000

カネゴンも、ネットの一角でときどき見かける「才能のある人には批評と称してどんなひどいことを言っても許される」みたいな雰囲気がどうにも恐ろしかったのだけど、この一文ですっきりした。長年の鼻づまりが治ったような心持【左右交互のおれカネゴン】。