色川武大は自身の中で「自然律」を最上位のものに置いていた。
これは「自然界の法則」と同じものであり、「人はいつかは死ぬ」とか「いいことばかり起きることはありえない」とか「何かを得るには何かを失わなければいけない」とか「進歩することは終わりに近づくことである」とか「どんなことにでも終わりはある」とか、1+1=2のような、人間どころかエホバの神ですら変えることができないような、科学者を含めたいかなる人間でも屈服せざるを得ないような法則を指す。
そして、「文学とは、人間が(人智では越えられない原理原則に立ち向かい、そして)負けるプロセスを描くものだ」という極めて優れた文学の定義を得た。
なぜか色川武大はこの自然律に「愛」を含めていたりして、ぎょっとするのだけど。