談合がなくなったら深刻な価格ダンピングが始まった

  • 問 談合組織が消滅したことで、ダンピングが激しくなったと。
  • 答 違う、勘違いせんといて。談合がなくなったからダンピングが起きたわけではないよ。ただ、発注者の力が強くなりすぎているのは確か。ゼネコンがお施主さんに何も言わへんねん。言うと嫌われるから。仕事欲しさに安値で受注して、そのしわ寄せは現場の職人や。

かつては突貫工事といったら割り増しが出たもんや。無理して早う造るんだから当たり前の話や。工期が短くなって得するのは発注者。ところが、今では突貫がかかっても、割り増しも何もない。単価ばかりが下がりよる。技術の進歩はあるけど、私に言わしたら、工期は3〜4割は短縮してるよ。

  • 問 職人の賃金も下がる一方のようです。
  • 答 下がりっぱなしや。私らの時代は、会社員の月収が3万円のところ5万円くらい出たんや。職人の仕事はハードだから、賃金でカバーしていてくれたんや。ホワイトカラーとブルーカラーという言葉があるやろ。ブルーカラーは確かに、地位は低いけど賃金はあった。

それがどうや。いい時は700万円あった年収も、今は一級の国家資格を持っている腕利きの職人でも350万円程度。普通の会社員から見ても決して高くない。だから職人のなり手がいない。こんな職業に夢が持てるか。あんたの子供さんをこんな仕事に就かせるか。就かせるわけないやん。

  • 問 「安値受注は品質に影響を与える」という懸念も出始めています。
  • 答 もっと品質が悪くなってくると思うよ。職人の腕がぐんと落ちている。教育してないもん。親方も教育に回すカネがない。それで、私がゼネコンに言うやん。「職人の育成にゼネコンも力を入れてくれませんか」って。そしたら、「落ちてもいい。誰にでも作れるようにしているから」と。こんな言い方あるか。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080327/151329/?P=1
  • 答 大阪には安くてうまい物はたくさんあるけど、安うていい物はない。勘違いしたらアカンで。安うてうまい物はある。味でごまかせるからな。でも、体にいいか悪いかは別や。わしの言うてる意味、分かるか?
  • 問 分かります。
  • 答 ペンキ塗りにしても、3回塗りのところをさぼって2回にしても分からへん。これは手抜きと違うで。単価が安かったら、そうしなけりゃ合わへん。せやから、ワシは言うてんねん。品質でも安うてええもんはない。ええもんは高いんや。
  • 問 なるほど。
  • 答 その代わり、ええもんを安く買うことはできる。それは、いい買い物。できたもんを値切ればいいんや。造る前に値切ったらあかんぞ。食べ物はうまくないとその場で分かるけど、建築物は結果が出るまでに時間がかかる。いずれ、品質の問題は出てくるで。

経済学ではこうしたダンピングについてはどんなふうに扱われているのだろうか。