お金がないので「光の場、電子の海―量子場理論への道―」(吉田伸夫著)をもう一度読み返してみて、あまりの面白さと愉快な物理学者大行進ぶりに卒倒しそうになる【最初は素通りおれカネゴン】。まずはトリビアから。

  • 電子と光子のみを相手にする量子場理論はヨルダンとパウリ(とハイゼンベルグ)によって1920年代末に完成されたが、その時点では何と中性子は発見されていなかった。
  • 数学的に難解な量子場理論と比べると、当時の原子核の研究は遥かに大雑把で、力わざでの計算や実験で何とでも論文が書けてしまうような状態だった。しかし核兵器出現の頃から成果の大半が非公開になってしまう。
  • 量子場理論は今でこそ実験データと驚異的に整合しているが、計算が恐ろしく複雑になってしまうため、20世紀後半に計算方法が整備されるまでのかなり長い間実用にはほとんど役に立たないとされていた。今でも電子工学や化学などの実用方面では、それより以前の量子力学の成果であるシュレーディンガー方程式で事足りてしまう。
  • 量子力学と比べると、量子場理論の方はなぜか世間にちゃんと知られていない。その原因として、量子場理論を作り上げたディラックとパウリが揃いも揃って並外れた変人で、世間にアピールするのが下手だったせいがあるのではないか。