カネゴンは実は音楽そのものより、音楽をダシにして全然関係ないことを書いたりするこういう文章が好きでたまらなかったりするのだけど、それはもしかすると大昔のロッキングオンの悪影響だったのかもしれないと今にして思ったりする【いつまでたってもおれカネゴン】。
当時のロッキングオンで今でも覚えている「走り屋川口」の話:

私の知人で、「走り屋川口」と異名を取る男がいた。彼は公道レースに血道を上げていて、埼玉の峠を来る日も来る日もバイクで攻めまくっていた。
あるとき、非常に難易度の高い峠のコーナーをどちらが果敢に攻められるかという競争をすることになり、走り屋川口は燃えた。
いよいよ当日の夜。峠の両脇にはずらりとギャラリーが並んでいる。彼の弟も応援している。川口と競争相手は互いに一歩も譲らぬ覚悟で峠のそのコーナーのインコースを目指して突っ走る。
そのとき悲劇は起こった。彼のバイクが一瞬バランスを崩したかと思うと、あっという間にバイクごとアウトコースに吹っ飛んだ。バイクは物凄い摩擦音を立ててガードレールに激突。川口はその手前で振り落とされ、もうもうと煙を上げるバイクを背景に地面に倒れたまま動かない。
ギャラリーは息を呑んだ。弟を含む何人かが直ちに助けようとして駆け寄った。倒れていた川口はやがてゆっくりと立ち上がり、大丈夫大丈夫という手つきをしながらヘルメットを外して言った。
「並と味噌汁、急いでお願い」
彼の目の前で泣き崩れる弟の姿があったという。