リズム感のある人とない人が同時に演奏している貴重な例として「ディシプリン」の頃のキング・クリムゾンが手頃かもしれない。かたやドラマー出身でリズムがとことんシャープなエイドリアン・ブリュー、かたや業界でも指折りにリズムの悪いロバート・フリップが二人して掛け合いしたり同じフレーズを弾いたりすると、口に出してはいけないようなリズムの異常かつ微妙な噛み合わせの悪さが浮き上がって、前と後ろに同時に引っ張られているような、世のどこにもないへんてこりんな感触を残す。
かてて加えて、ベースは元スタジオミュージシャンでありながら己の鍛えぬいたスイング感をわざと殺してクリムゾンに適応したトニー・レヴィン、ドラマーはテクニカルでありながらはなからスイング感のないビル・ブラッフォードという組み合わせもあって、さらにわけがわからなかったりする。