もう少し穏やかなことを。

学生の時のバイト先(ビルの床掃除)に、カネゴンと入れ替わりにやめた中国からの留学生がいたのだそうだ。バイト先の社長以下が呑み会の後に彼の家になだれ込んだとき、「皆さんだけに特別価格でお譲りします」と彼が押入を開けると、びっしりと毛生え薬「109」のパッケージが並んでいた。社長は大喜びでつけていたらしいけど、番頭さんは「偽もんちゃうか」と半信半疑。その後、留学生氏は109の行商が好調らしく、バイトの必要もないぐらい羽振りがよかった。社長の奥さんに高級腕時計をポンとくれたりしたこともあったらしい。

その後しばらくして、彼は突然バイトをやめてしまう。番頭さんが電話で連絡を取ると「探さないで下さい」とのこと。なおも尋ねると「私、もう、中国に帰れない。私の兄、北京で109の密造工場経営しているけど、指名手配された。捕まると死刑」。