カネゴンのバイト先に、しばらくして別の中国からの留学生が2人入ってきた。うち一人は苦学して夜学の日本語学校に入り、30近くになって駒大に見事合格した立派な人。気さくなタイプで、仕事の合間にいろんな話をしたのを覚えている。彼の名前は、矢吹丈の素質を見いだしてトレーナーになった、愛くるしいアイパッチを装着したスキンヘッドの初老の男の下の名前と寸分違わず同じだった。

その後しばらくして、彼は突然バイトをやめてしまう。番頭さんが電話で連絡を取ると「皆さんの身の上に危険が及ぶ可能性があるので、来られません」とのこと。なおも尋ねると、その人は北京出身なのだけど、日本語学校時代に広東の留学生を半殺しにしてしまい、広東チームから執念深く追跡されていたのが、ついに住んでいるアパートを突き止められてしまったのだという。いい人だっただけに、本当に残念。