カネゴンがビル掃除のバイトをしていた頃、神田の現場の向かいに今は亡き青林堂を見かけ、噂どおり材木屋の二階にあった。
御茶ノ水あたりを歩くときに専門書の出版社がひしめき合っているのをたまに見かけるのだけど、割と名の知れた出版社であってもびっくりするぐらい事務所が小さかったりする。外からのぞくと【いずれ逮捕のおれカネゴン】、木造の四畳半にスチール机と黒電話と返本の山、さすがに裸電球ではないけれど天井から長い蛍光灯がぶら下がり、編集長(と思しき人物)は黒縁めがねにごま塩頭を七三に分け、昔の学校の先生みたいに袖に汚れ防止の黒いもこもこした布をつけている、という印象。